5年点検~基礎断熱の床下~

早いもので、拙宅に移り住んでちょうど五年が経過し、一昨日シロアリ業者さんによる床下点検が行われた。
床下点検を行った業者さんには、「年間200件くらい床下に潜るが、初めて床下に照明がある家をみた。」、「こんなに綺麗な床下を見たのは初めて。」とも言われた。
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廃刊になった日経ホームビルダー2018年10月号「住宅に広がるカビ汚染」、"基礎断熱の床下に死角”という記事には、カビで肺炎を発症した事例が紹介され、本間教授の「床下をカビの汚染源にしないためには、掃除しやすい構造にしておくことが重要だ」という言葉も紹介されていた。
拙宅は、オーブルデザインの浅間先生のブログ記事を参考にさせて頂いて、床下点検と清掃をしやすいように照明を設置し、ロボット掃除機を投入出来るようになるべくフラットな基礎床面と、配管吊り施工を行って頂いた。(業者さんによると、床下のメンテナンス時に、誤って配管を破損してしまう事もあるとのこと。)
基礎断熱の住宅では、❶照明設置、➋配管吊り施工、❸掃除のしやすいフラットな床面は必須と思われる。あと、拙宅の場合は、半分床下エアコンで1階の冷房も行うので、漏水センサーの設置も必要となっている。(3年連続ドレーンが詰まって漏水があった。)

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漏水の発見が遅れると↑のように大変な事になる。(-_-;)
何事も早期発見が望まれる。
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今夏は漏水センサーによる早期発見で床下に潜らずにすんだ。
エアコンの近くに置く①漏水センサーと②エアコン用 ドレンつまり取りポンプの2品は拙宅に必須となっている。
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四年弱のファンユニットモジュール&外気フードの汚れ

COVID-19(新型コロナウィルス)によって高まった換気への関心。YouTubeには専門家の換気に関する動画がある。
https://youtu.be/iC6PG6NoM5M?t=464
三密の換気の悪い密閉空間に関して、学校での例にも触れられている。新型コロナウィルス対策で換気の重要性が認識された為、息子が通う小学校では教室の扉を開けたまま授業を行い、教室の温度が外気温に近づく部分も出来た。その影響により今年の冬は芯から冷えた体を温める為に基礎断熱の拙宅に炬燵が登場した(*_*)新型コロナウィルスの流行は危険で対策も必要だったと思うが、教室の温熱環境、換気方法はどうにかならないかとも思う。


さて、もうすぐ築四年となる拙宅の全熱交換型
換気システムを使ってきた感想だが、夏や冬の湿度管理にあって良かったと感じている。春や秋の室温の安定化、快適性といった面でも熱交換型換気システムに満足はしているが、ただダクトレスの為、清掃手間はかかる。YouTubeには3ヶ月ごとのフィルター清掃だけでメンテナンスが簡単なような感じの動画がアップロードされているが、ファンに埃が付いている為、ファンや周辺部の清掃も毎回行っている。清掃時間は、6台で1時間半位かかるが、時間をかけても物理的に清掃する事が難しい部分がファンと熱交換素子の間である。昨年、外気側を高性能フィルターに変え、秋季は、大した汚れもなかった事から、清掃の間隔をあけてみたがこれが失敗だった。7ヶ月ぶりに壁からファンユニットモジュールを引き抜くと、過去最長の清掃間隔で最も酷い汚れを見る事になり、初めてネジを外して清掃した。
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以下、汚い画像が多いので御注意を!








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外部環境の違いから汚れ&カビが酷いファンユニットモジュールがある。近所で工事があると、工事があった方向のファンユニットモジュールの汚れ&カビが酷くなる。。。
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引き違いのアルミサッシや洗濯機で見る汚れ・カビと似た感じで、冬はファンユニットモジュール外気側部分で結露&カビが酷いようである。

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そして外気フードも汚れている。
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マニュアルを見ると、「2年に1度、外気フード本体および取り付けベースを清掃してください。」とあるが、聞いた事もなく、清掃した事もない。。。「外気フードが高所にある場合は、専門の業者にご依頼ください」とあり、ダクトレス式換気システムでも専門の業者に依頼しないと清掃出来ない部分もある。
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快適な睡眠の為の理想は寝室の音問題を避けられるダクト式全熱交換換気システムであるが、設計するには、構造、温熱、空調設備、メンテナンスと幅広い知識が求められる。日本の住宅が、夏(高い絶対湿度)&冬(低気温)に結露&カビから逃れる事は至難であり、仮に性能面で完璧な住宅が建ったとしても、外気を導入する部分のダクト内汚染は長期的に避けられないだろう。
住宅の換気システムがカビから逃れる事は不可能だと私には思われるので、設備設計・施工を失敗するリスクが低く、施主が清掃可能なダクトレス式全熱交換換気システムが私にとっては現実的選択だったと思っていたが、高所にある外気フードの清掃だけは不可能であった。。。

地盤の熱伝導率の違いによる熱損失

【はじめに】
基礎断熱の熱損失についての論文を読むと、地盤の熱伝導率の条件を変えて比較しているものが多い。基礎断熱の熱損失に影響のある因子を複合因子重回帰分析プログラムで解析した鈴木(2012)※1)によると、地盤の熱伝導率が最も影響のある因子であった。そこで、期間3年のシミュレーションを前のブログ記事で使用した基礎断熱モデルを用いて以下の4パターンで行う。
① 地盤が全て砂(含水率0%)
② 地盤の深さ1-2m部分に重量含水率23.3%の砂の層がある。その他は含水率0%の砂。
③ 地盤が全て砂(重量含水率23.3%)
④ 地盤が全てローム質

【地盤の熱物性値 熱伝導率(W/(m・K))密度(kg/㎥)比熱(J/(kg・K))】
砂(含水率0%)    0.256 W/ (m・K) 1313(kg/㎥) 1000(J/(kg・K))
砂(重量含水率23.3%) 1.89 W/ (m・K) 1590(kg/㎥) 1787(J/(kg・K))
ローム質        1 W/ (m・K) 1500(kg/㎥) 2300(J/(kg・K))

赤坂 (1978)※2)では、砂(含水率0%)、ローム、土、石灰質土壌、砂(重量含水率23.3%)の5つの土質を用いて二次元差分計算で単位温度差、単位時間、単位床周長当たりの熱損失を計算していた。赤坂 (1978)の表1の熱伝導率(kcal/(m・h・℃))と温度伝導率(㎡/h)の値から容積比熱の値を求めた。砂(重量含水率23.3%)の熱伝導率と密度は稲葉(1989) ※3)の値を使った。砂(含水率0%)の密度と比熱は分からなかった為、容積比熱1313kJ/(㎥・K)から適当に密度と比熱に分けた。(特に計算上の問題はない。)ローム質は材料の熱定数表の値で、鈴木憲三先生の論文にも同じ物性値が使われていたのでこの値とした。

【計算条件】
Therm3D ※4)の解析部分を使用した六面体20節点アイソパラメトリック要素による非定常計算で、2004年6月1日~2007年5月31日までの1095日分の平均外気温を気象庁のWebからスクレイピングし、非定常解析の計算打ち切り時間を1日に設定し、1095回繰り返すこととする。

床面積 8m×8m=64㎡(壁芯8.15m×8.15m=66.4225㎡)の1/4モデル
水平方向の分割(X軸とY軸) 0m,2m,3m,3.5m,3.9m,4m,4,15m,4,25m,4.7m,5.7m,8.7m
鉛直方向の分割(Z軸) 0m,6m,8m,9m,9.5m,9.75m,9.8m,9.85m,9.9m,9.95m,10m(外壁1mがある場合+1mの11m)
外壁 高さ 床から1m
外壁 幅 0.15m
コンクリート厚さ0.15mのフラットスラブ
外断熱材厚さ 基礎立ち上がり100mm
地盤の深さ 10m(スラブ下9.85m)
室内温度 25℃で一定
外気温変動 北海道北見 2004.6~2007.5の3年間
[材料物性値 熱伝導率(W/(m・K))密度(kg/㎥)比熱(J/(kg・K))]
コンクリート     1.6W/(m・K) 2300(kg/㎥) 880(J/(kg・K))
基礎立ち上がり断熱材 0.034W/ (m・K) 27(kg/㎥) 1450(J/(kg・K))
室内側境界条件 熱伝達境界 熱伝達率は9w/(㎡・K)で一定
外気側境界条件 熱伝達境界 熱伝達率は23w/(㎡・K)で一定
モデル切断面の境界条件① 底面は温度固定境界 6.85℃(7年間の平均気温)
モデル切断面の境界条件② 底面以外は断熱境界
初期値 2004年5月31日24時の外気温14.2℃(室内温度も14.2℃)で計算した定常解析の値

【1日(1d)毎の非定常解析による単位変換】
コンクリート     1.6J/(s・m・K)→138240J/(d・m・K)
砂(含水率0%)    0.256 J/(s・m・K)→22118.4J/(d・m・K)
砂(含水率23.3%)   1.89 J/(s・m・K)→163296J/(d・m・K)
基礎立ち上がり断熱材 0.034 J/(s・m・K)→2937.6J/(d・m・K)
室内側熱伝達率 9 J/(s・㎡・K)→777600J/(d・㎡・K)
外気側熱伝達率 23 J/(s・㎡・K) →1987200J/(d・㎡・K)

【結果】
シミュレーション3年目の冬季(11-3月)の床からの熱損失(kWh)と同期間の外気温と室内温度の温度差の積算値で割り返した値(W/K)、その値を壁芯の床周長(32.6m)で除した単位床周長、単位温度差の値。
① 798kWh 7.86(W/K)  0.241W/ (m・K)
② 983kWh 9.68(W/K)   0.297W/ (m・K)
③ 4051kWh  39.89(W/K)   1.224W/ (m・K)
④ 2365kWh  23.29(W/K)   0.714W/ (m・K)
上の値は基礎外断熱でスラブ下断熱材無しの場合の比較だが、土の熱伝導率が大きくなれば、床からの熱損失が増えていく。


【断熱による違い】
基礎断熱の熱損失の因子で、地盤の熱伝導率の次に大きな影響があるのは、土間断熱抵抗である。断熱の違いによる3年目の冬季(2006年11-2007年3月)5か月分の床からの熱損失(kWh)と同期間の外気温と室内温度の温度差の積算値で割り返した値(W/K)の計算結果は、以下のようになり、地盤の熱伝導率が高いときはスラブ下断熱材の効果が高い結果となった。

【地盤条件①の断熱による違い】
❶無断熱: 2519kWh  24.80(W/K)
➋基礎立ち上がり外側断熱:798kWh 7.86(W/K)
❸基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ50mm: 631kWh  6.22(W/K)
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:551kWh  5.43(W/K)

【地盤条件②の断熱による違い】
❶無断熱: 2593kWh 25.54(W/K)
➋基礎立ち上がり外側断熱: 983kWh 9.68(W/K)
❸基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ50mm: 755kWh  7.43(W/K)
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:642kWh  6.32(W/K)

【地盤条件③の断熱による違い】
❶無断熱:5606kWh 55.2(W/K)
➋基礎立ち上がり外側断熱:4051kWh  39.89(W/K)
❸基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ50mm:1644kWh  16.18(W/K)
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:1106kWh  10.89(W/K)

【地盤条件④の断熱による違い】
❶無断熱: 4012kWh 39.51(W/K)
➋基礎立ち上がり外側断熱:2365kWh  23.29 (W/K)
❸基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ50mm:1243kWh  12.24(W/K)
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:910kWh  8.97(W/K)

【外周部と中央部の比較】
中央部の熱損失を無視しても問題ないとする考えもあるようなので、壁の内側、隅角部から1mの部分(外周部)とそれより内側(中央部)の値を比較してみた。床面積は64㎡で、外周部は28㎡、中央部は36㎡である。地盤の熱伝導率が高いときは、中央部の熱損失が無視出来ない大きさである。

【地盤条件①の断熱による違い】
❶無断熱: 2519kWh 外周部 2306kWh 中央部 212kWh
➋基礎立ち上がり外側断熱:798kWh 外周部 622kWh 中央部 176kWh
❸基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ50mm: 631kWh 外周部 463kWh 中央部 168kWh
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:551kWh 外周部 400kWh 中央部 151kWh

【地盤条件②の断熱による違い】
❶無断熱: 2593kWh 外周部 2537kWh 中央部 336kWh
➋基礎立ち上がり外側断熱: 983kWh 外周部 680kWh 中央部 303kWh
❸基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ50mm: 755kWh 外周部 498kWh 中央部 257kWh
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:642kWh 外周部 425kWh 中央部 217kWh

【地盤条件③の断熱による違い】
❶無断熱:5606kWh 外周部 4095kWh 中央部 1510kWh
➋基礎立ち上がり外側断熱:4051kWh 外周部 2671kWh 中央部 1379kWh
❸基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ50mm:1644kWh 外周部 937kWh 中央部 706kWh
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:1106kWh 外周部 646kWh 中央部 460kWh

【地盤条件④の断熱による違い】
❶無断熱: 4012kWh 外周部 3220kWh 中央部 791kWh
➋基礎立ち上がり外側断熱:2365kWh 外周部 1660kWh 中央部 704kWh
❸基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ50mm:1243kWh 外周部 761kWh 中央部 483kWh
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:910kWh 外周部 561kWh 中央部 350kWh



【まとめ】
基礎外の立ち上がり部分の断熱材の床からの熱損失削減効果は①1721kWh,②1610kWh,③1555kWh,④1647kWhとなり、土壌の物性値に殆ど影響されていないようなシミュレーション結果だったが、スラブ下断熱材の効果は土質の熱物性値次第である。土壌の物性値による違いが大きすぎるため、その分野の知見が必要に思われた。


参考文献
1) 鈴木憲三「3次元伝熱解析に基づく土間床などの年間熱損失計算法(2012)」
2) 赤坂裕「床面および地下壁面の暖房負荷計算法(1978)」
3) 稲葉英雄「土壌の熱物性(1989)」
4) 黒田英夫「Visual Basicによる3次元熱伝導解析プログラム(2003)CQ出版社」